バスケットボールの技術や戦術は進化し続けています。
その研究者も多くおり、研究論文もたくさん発表されています。
しかしながら、その論文を選手やコーチが理解するのはなかなか難しいです。
本書は、最新のバスケ技術・戦術を研究論文から読み解き、選手やコーチが理解できるように解説された本です。
琉球ゴールデンキングスHCの桶谷大氏が監修し、練習方法も提案してくれています。
内容の紹介と感想
2023年ワールドカップでの男子日本代表の活躍があり、日本でもバスケットボールの注目度が上がってきていますね。
バスケットボールは1891年に誕生し、130年余り経っていますが今もなお新しい技術・戦術が誕生しています。
一昔前に、最良とされていた技術や戦術が覆ることも珍しくありません。
選手・コーチは最新の技術・戦術を取り組むことにより、試合を有利に進めることができます。
バスケファンとしても、観戦がより面白くなることでしょう。
こうした研究は日々行われており、研究論文などの成果物が発表されています。
2014年に日本バスケットボール学会が設立され、日本でもその研究成果が手に入りやすい環境になりました。
しかしながら、研究論文を選手やコーチが読み解くのは難しいでしょう。
できれば、最新の情報を取り入れたいところですよね。
本書は、現時点で発表されている研究成果を選手やコーチでも理解できるように解説し、練習方法に落とし込んでいます。
自身やチームの練習に導入するにおすすめです。
ただし、技術は日進月歩です。
この本で紹介されている技術も廃れる日が来るかもしれません。
著者も以下のように綴っています。
読者の皆さんには、本書に対して批判的な視点をもって、読み進めていただければと存じます。
本書は、タイトルの通りオフェンスの技術を中心に紹介しています。
構成は、研究論文による解説ページと、練習ドリルページの各章2部構成となっています。
解説ページで理論を学び、練習ドリルページでその実践方法を学びます。
インプットとアウトプット方法がわかりやすく紹介されています。
また、最近のバスケ本で流行りの動画付きです。
北谷高校女子バスケットボール部の選手が、動画で練習方法をわかりやすいように紹介しています。
個人オフェンスのメソッド
個人オフェンスメソッドのなかで、印象的である技術を紹介します。
まず、一つ目はフローターショット。
比較的身長の低いプレーヤーが、ゴール下に切り込んでいきシュートを放つ際に、普通のシュートでは高身長のビックマンにブロックショットされてしまうことがあります。
そこで、ブロックショットをかわすために、アーチを意識的に高くするように放つシュートがフローターショットです。
このフローターショット。一昔前ではこのようなシュートを打っていては怒られていたのではないでしょうか。
私も初めて認識したのは、スラムダンクの沢北じゃないでしょうか。(それでも30年くらい前ですが)
その時も花道はへなちょこシュートと表現していましたね。
今では立派な技術の一つであり、研究もされています。
フローターショットのメカニズムが紹介されております。
一部紹介すると、手首、肘、肩を正面から見て一直線に保ち、ボールを放つタイミングでは肩関節を145度程度屈曲させる、というような感じです。
論文では、体の使い方や、角度などが研究されていることがわかります。
今後も研究は続いていき、いつか誰もが習得しないといけない技術になるかもしれません。
練習方法も、片足踏切、両足踏切など紹介されています。
次は、技術ではありませんが、シュート成功率を高める方法。
シューティングの練習順序によって、成功率が変わるという研究成果です。
同じ場所から繰り返し打つシュート練習と、毎回異なる場所から打つシュート練習では、同じ場所から打つ方が早く成功率が上がります。
経験者であれば、同じ場所から続けて打つ方が感覚がつかみやすくなり、成功率があがるということに納得がいくと思います。
ただし、同じ場所から打つシュートの定着率はあまり良くないようです。
これは、同じ場所から繰り返しシュートを打つ練習をしたプレーヤーに、毎回異なる場所から打つシュート練習をしたところ成功率が低い結果が出たそうです。
その逆のパターンは高い成功率の結果でした。
試合では、毎回異なる場所からシュートを打つことになることから、練習の際も毎回異なる場所からシュートを打った方が効果が高いということです。
もちろん、その練習ドリルも紹介されています。
スクリーンプレーのメソッド
現代バスケでは、ピック&ロールは欠かせない戦術となっています。
ピック&ロールの説明を本書から引用します。
ピック&ロールとは、オフボールマンがボールマンとマッチアップするディフェンスプレーヤーの進路に位置を占めることにより、ディフェンスプレーヤーの動きを妨げるプレーです。
進路を妨げるプレーをスクリーンと言い、妨げるプレーヤーをスクリーナー、スクリーンを利用するプレーヤーをユーザーと呼びます。
ユーザーはピック&ロールを使用するとき、どのような判断をすべきか。
トッププレーヤーのインタビュー調査をもとに研究した結果が紹介されています。
ユーザは、スクリーンを利用する直前に、スクリーンがセットされている方向と反対側にドライブをするリジェクトを行うことが有効だそうです。
このことにより、ユーザとユーザディフェンスに距離ができ、次に続くスクリーンの利用時にユーザディフェンスが追いかける展開となり、ファイトオーバーされにくくなります。
このリジェクトの際にユーザーディフェンスの位置を判断し、反応していないようであればスクリーンを使用せずに、実際にリジェクトを選択するというような判断も求められます。
さらに、ユーザーがスクリーンを利用することになった際には、スクリーナーディフェンスの位置を確認し、次の行動を判断します。
スクリーナーディフェンスの対応はさまざまな方法がありますが、大きく3つの方法が説かれているそうです。
- 離れた位置取り
- 近い位置取り
- ボールに出てくる
それぞれの対応方法は、ぜひ本書を購入して確認してください。
このように、ピック&ロールの研究は進んでおり、どのようにスクリーンをかけると有効なのか、どのように守る方法があるのか、その守る方法に対してどう対処すべきか。
などなど、奥が深いですね。
これからも研究は進んでいくのでしょう。
練習方法としても、ズレの作り方や対応方法のドリル。
ピック&ロールの守り方のドリルが紹介されているので、参考になりますね。
本書の目次
本書の目次は以下の通り。
- PART1:個人オフェンスメソッド
1on1のドライブで得点を獲得する
フローターショットでビッグマンをかわす
効率よくショット成功率を高める
ターンオーバーを減らして勝つ
次に求められるジャンプによって着地を変える - PART2:チームオフェンスメソッド
ノーマークであれば積極的に3ポイントショットを放つ
ゴール付近にボールを侵入させてショット成功につなげる
プレー中の視線をコントロールする
日本代表に求められるパス能力の進捗 - PART3:スクリーンプレーのメソッド
ハンドラーとしてピック&ロールを極める
一瞬のチャンスを見逃さずにパスを通す - PART4:フィジカルと判断力のメソッド
判断力を向上させてパスミスを減少させる
バスケットボールのリズム感を磨く
カオスな状況から素早く動き出す
怪我のリスクを下げてパフォーマンスアップ
小谷究氏のプロフィール
著者の小谷究氏は、バスケットボールの書籍に多く携わっています。
本ブログでも度々名前が挙がり、私個人的にも崇拝しています。
流通経済大学スポーツ健康科学部スポーツコミュニケーション学科准教授
日本バスケットボール学会理事
日本バスケットボール殿堂事務局
という肩書を持ち、流通経済大学バスケ部ヘッドコーチを務めています。
研究論文も多く発表しており、書籍の出版にもたくさん関わっています。
以下記事で紹介の本も、小谷氏関連がたくさんです。
桶谷大氏のプロフィール
琉球ゴールデンキングスヘッドコーチ。
琉球を3シーズン連続Bリーグファイナルまで進出させ、2022-23シーズンはチャンピオンに導いた名手腕。
優勝した、2022-23シーズンはBリーグ最優秀ヘッドコーチ賞を受賞。
高校卒業後、コーチングを学ぶためにアメリカへ留学。
その後、当時bjリーグの大分ヒートデビルズ、琉球ゴールデンキングス、岩手ビッグブルズ、大阪エベッサでヘッドコーチを経験。
Bリーグとなってからは、大阪エベッサ、仙台89ers、琉球ゴールデンキングスでヘッドコーチを務める。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
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