NBAプレーヤーとして日本人最長の6シーズンを闘いた渡邊雄太選手。
その6年間は想像を絶する苦難の連続であった。
本書は、NBAでの6シーズンとその間に行われた日本代表としての活動について、渡邊雄太選手でしか知りえない思いを綴っています。
タイトル通り「心」すなわちメンタル面での心境や対応、苦悩を赤裸々に語っています。
スポーツ選手でなくても、この「心」の持ち方には通づるものがあると思います。
たくさんの名言も詰め込まれているので、渡邊雄太ファン、バスケファンならずとも一読してみていただきたい。
内容の紹介と感想
渡邊雄太選手と言えば、言わずと知れた日本人2人目のNBAプレーヤー。
平均在籍年数が4年と言われるNBAにおいて、6年間NBAプレーヤーとして活動した逸材です。
現在はNBAとしての活動を終えて、日本でBリーグの千葉ジェッツに所属しています。
簡単に経歴を紹介すると以下の通り。
- 2018-2020 メンフィス・グリズリーズ
- 2020-2022 トロント・ラプターズ
- 2022‐2023 ブルックリン・ネッツ
- 2023‐2024 フェニックス・サンズ →メンフィス・グリズリーズ
- 2024- 千葉ジェッツ
渡辺雄太選手は、いつもぎりぎりでNBAでの契約を勝ち取ってきました。
ドラフト外から2-way契約(NBAチームに在籍したまま、下部組織の試合に出場できる制度)をもぎ取った初年度のメンフィス・グリズリーズ。
エグジビット10契約(無保証のキャンプ参加契約)から、2-way契約を勝ち取った3年目のトロント・ラプターズ。
無保証のトレーニングキャンプから開幕露スター契約を獲得した5年目のブルックリン・ネッツ。
そして、優勝できるチームにと決めた6年目のフェニックス・サンズ。
5年目のサンズとの契約で、ようやくトレーニングキャンプの参加が不要な契約を勝ち取ります。
しかしそのシーズン中に古巣グリズリーズにトレードされます。
このように、いつも崖っぷちで戦っていた渡邊雄太選手。
「心」メンタルはかなりすり減っていたようです。
その戦いの軌跡を本書で語っています。
負けず嫌いな渡邊雄太
渡邊雄太選手が6シーズンにわたりNBAで活動できた要因の一つに、負けず嫌いなところがあるということが感じ取れます。
2018-19シーズンでメンフィス・グリズリーズとの2-way契約を結んでいたときの話です。
Gリーグでの活動が中心となり、なかなかNBAにコールアップされずもがいている時期。
渡邊選手と同じく2-way契約の選手がGリーグで結果を残し、数少ないチャンスをものにしグリズリーズと本契約を結ぶことになりました。
その姿をみて、渡邊選手は「おめでとう」という感情とともに「なんで俺はダメなんだ」という気持ちが芽生えたそうです。
これが渡邊選手の正直な感情だったのでしょう。
また、グリズリーズ2年目には八村塁選手がNBAにドラフト指名され、ワシントン・ウィザーズと契約します。
この時も、喜びの感情とともに嫉妬心も生まれたようです。
八村選手は1年目からスタートで起用されることもあり、劣等感を抱くこともあったようです
これらは渡邊選手の正直な感情だったのではないでしょうか。
彼らの才能を認めつつ、負けてられないという感情が生まれたのではないでしょうか。
ここでくじけることなく、この差を埋めるべく地道に努力する。
これが渡邊選手の才能だったのでしょう。
孤独と闘ったコロナ禍
渡邊選手が人生でしんどかったトップ3の中には、NBA2年目のコロナ禍でのシーズンだったそうです。
わたしは詳しく知りませんでしたが、2019-20シーズンのNBAはコロナで一時中断したのち、通称バブルと呼ばれるディズニーワールド内施設に設けられた隔離された施設で再開されました。
外とのコンタクトは一切断たれ、自分の部屋と練習場・試合会場の行き来しかできない環境はかなり堪えたようです。
試合にコンスタントに出場できる時期でもなかったようで、より一層孤独感を感じたそうです。
こんな経験もあったのだと知り、これもメンタルを削られる要因の一つだったのだな、と知ることができました。
日本代表活動への想い
本書では、日本代表としての活動についても多く語られています。
自信をもって挑んだが、3連敗で終わった、東京オリンピック。
代表引退を宣言し自分自身を追い込んで結果を出した、沖縄ワールドカップ。
世界まであと一歩まで差し掛かった、パリオリンピック。
渡邊選手はとても責任感が強く、毎回覚悟をもって挑んでいることがわかります。
渡邊選手のおかげで日本代表はここまで強くなってきています。
この想いをぜひ本書で感じてほしいです。
本書の目次
本書の目次は以下の通り。
- 序章:「心」が人生を変える
- 第一章:心が成功と失敗を決める
2018~2020年 メンフィス・グリズリーズ - 第二章:可能性とは、挑戦者だけがもてる勇気のことである
2020~2022年 トロント・ラプターズ - 第三章:置かれた場所で、人が嫌がることを率先してやる
2022~2023年 ブルックリン・ネッツ - 第四章:覚悟と、歓喜と、切なさと
2023年 ワールドカップ(沖縄) - 第五章:過剰な意識が自分を縛る
2023~2024年 フェニックス・サンズ - 第六章:尽くした先に見えた心の在処
2024年 メンフィス・グリズリーズ - 第七章:心の声に素直に向き合う
2024年 パリ、千葉、そして未来へ - 終章:神様は自分の「心」の中にいる
まとめ
渡邊選手は自身のことを「くそ真面目」と表現していることがありました。
NBAにはいろんな選手がいます。
それでも、渡邊選手はこの自分らしさを貫き通し、真面目にコツコツ努力した結果がこの6シーズンNBA在籍に繋がったと思います。
日本人の「心」に通ずるものがあると感じます。
最後に、渡邊選手も大事にしている言葉を紹介します。
可能性とは、挑戦者だけがもてる勇気のことである
尽誠学園の恩師・色摩先生の言葉だそうですが、渡邊選手にピッタリでとてもいい言葉だと思いました。
常に崖っぷちで挑戦し続けた渡邊選手だからこそ、可能性がたくさん生まれたんでしょうね。
次はBリーグでの可能性を見せてもらいましょう。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
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