2023-24シーズンで現役引退を発表した、広島ドラゴンフライズの朝山正悟の哲学・生きざまを記した本。
著者の坂上俊次氏は広島ドラゴンフライズの創設から取材してきた中国放送のアナウンサー。
別途、取材を行いこれまでの朝山正悟の軌跡を「轍学」としてまとめています。
内容の紹介と感想
日本のバスケットボールが盛り上がっている昨今ですが、朝山正悟の名前を知っているのはだいぶBリーグに詳しい人ではないでしょうか。
かくゆう私も広島がB1へ昇格する以前の朝山選手のことはほとんど知りませんでした…。
全国的にはそうかもしれませんが、広島では相当な知名度があるようです。
広島の街で石を投げれば朝山ファンに当たる
と言われるほどの存在のようです。
チーム創設後間もない広島ドラゴンフライズに移籍し9年間活動。
いまやミスタードラゴンフライズという異名を持っています。
そんな朝山選手、ここまでの道のりは決して順風満帆ではありませんでした。
特に、広島に移籍した後の9年間は特別です。
創設間もないチームなのでカルチャーがなく苦悩したり、大けがをしてシーズンを棒に振ったり、シーズン中のHC解任により選手兼HCとして活動したり…。
そんな中でもファンサービスや、コート外の活動にも手を抜くことがありませんでした。
朝山選手の人の良さや、ハートの熱さがにじみ出てきており、選手を含めた多くの人々に影響を与えたことがよくわります。
このマインドを今、現役で活躍している選手が引き継いでほしいと思う!
本書には朝山マインドを引き継いでいる弟子の寺島選手による解説も掲載されています。
42歳まで現役を続けられたマインド
朝山選手はスリーポイントシュートを得意とする選手です。
一流選手の基準となる成功率40%を複数回達成の実績がありますが、個人の成績にはあまり興味がないと語っています。
そんな朝山選手のシュートに対する考え方が印象的でした。
シュートは誰が打っても、成功率2分の1です。ゴールに入るか、入らないか。その2分の1です。
さらに、朝山選手がもっと大事にしている数字は
シュートを打てるか、打てないか。これに関しては2分の1ではいけません。状況にひるんで自信がなくてシュートが打てないようなことは、あってはいけません。いかにシュートを打ち切れるかどうか。ここは1分の1でないといけません
この考え方、めちゃめちゃカッコよくないですか。
一流の選手でもシュートが入らないことはあります。
それでもシュートを打てる状況では打ち切らないといけないということです。
こういったマインドを持ち、実践することができたために42歳まで現役を続けられたんでしょう。
その朝山選手でも、さすがに晩年は出場機会が減りベンチの時間が長くなることもあります。
そんな中でもくさることなく、一緒に戦っています。
コートでもベンチでも、大事なのは情熱です。
コートの中でも外でもチームに貢献することを知っており、それを実践しています。
ベテラン選手が率先することで、若手選手の士気も上がるでしょう。
こういった姿をファンも見てるのでしょう。そりゃ好きになりますよね。
アドバイスはタイミング、そして見返りは求めない
朝山選手くらいのベテラン選手になると、アドバイスを求められることも多くなるし、自身もチームに何かを残したいと思うこともあったでしょう。
朝山選手はやみくもに押し付けることはしなかったそうです。
大切にしているのはタイミングです。
せっかくのアドバイスが反発を呼び、受け流されるのはもったいないです。
相手がアドバイスを受け入れる状態でないと、意味がない。
そのタイミングを見計らうために相手を観察してるんだそうです。
この言葉も沁みますね。
スポーツ選手ではないビジネスマンでも、部下に押し付けるように指導したり、その逆があったりという心当たりがあるのではないでしょうか。
そしてもう一つ大事にしていることが、アドバイスに対して見返りを求めないということ。
自分がアドバイスしたことが相手に対して正解だったかはわからない、正解だったとしても結果が出るにはタイムラグがある。
こういった考えを持っているため、即効性や起爆剤になることを求めてないそうです。
カッコいいですね。
こうして、タイミングを見計らって種を撒いていき、すぐに芽を出すことを求めない。
こうして朝山選手と出会った人々が、いつか芽を出し、花開き、未来のバスケットボール界を様々な立場で支え、盛り上げてくれるのでしょう。
そこまで思い入れのある選手ではなかったのですが、本書を読んで朝山選手に惚れてしまいました。
もうプレーする姿は見れないのですが、別の立場でバスケットボール界に姿を見せてくれることでしょう。
本書の目次
- 逃げない、断らない プロアスリートとしてのルールブック
- 限界を決めない 42歳まで現役を貫く男のルールブック
- 「戦術」より「哲学」 チームづくりのルールブック
- 義理も人情も 人間関係のルールブック
- 仕事も家庭も「100:100」 ワークライフバランスのルールブック
- 朝山正悟 最後に語っておきたいこと
朝山正悟選手のプロフィール
- 朝山正悟(あさやま しょうご)
- 生年月日:1981年06月01日
- 出身地:神奈川県
- 出身学校:世田谷学園高校 ~ 早稲田大学
- 経歴:
- 日立さんロッカーズ(2004-2005)
- OSGフェニックス(2005-2008)
- レラカムイ北海道(2008-2009)
- アイシンシーホース(2009-2013)
- 三菱電機ダイヤモンドドルフィンズ名古屋(2013-2015)
- 広島ドラゴンフライズ(2015-2024)
朝山選手はお兄さんの影響を受けて小学5年生でバスケットボールを始める。
中学時代には神奈川県選抜としてジュニアオールスターに出場し優勝を果たし頭角を現す。
高校時代は、3年生時にウィンターカップ3位となり、大会ベストファイブにも選出される。
大学時代も活躍し、優秀選手賞と得点王を獲得。
プロ入り後、アイシンシーホース時代に天皇賞優勝(2回)、リーグ(JBL)優勝と充実の結果を残す。
日本代表にも選出され、2006年キリンカップに出場している。
2015年に広島ドラゴンフライズに移籍し、2023-24シーズンでの引退を表明。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
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